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事業用の資産の買い換え特例を適用して買い換えた資産の取得価額はどのようになるのでしょうか。

 

事業用の土地・建物を売って事業用資産の買い換え特例を適用する場合、その買い換えた事業用の資産の取得価額は、売却した事業用の資産の取得費を基準にして算出します。このことから、対象買い換え資産が機械装置・建物である場合の減価償却費の額数は、買い換え資産を購入した実際の価額などではなく、譲渡資産から引き継いだ取得価額が基準になります。

Ex1)譲渡資産の売却額が買い換え資産の購入額より少ない場合
売却金;5000万円、譲渡費用:100万円、譲渡資産の取得費:3000万円(土地と減価償却後の建物の価格の合計)、買い換え資産の購入額:6000万円(土地4200万円、建物1800万円)

1. 引き継がれる取得価額の算出:
(譲渡資産の取得費‐譲渡費用)X0.8=2480万円
売却額X0.2=1000万円
買い換え資産の購入額‐売却額=1000万円
この三つの額数を全部足すと4480万円が算出されます。
2. 引き継がれる取得価額と土地・建物への分配の算出
土地の場合:4480万円X土地の買い換え購入額/総買い換え資産の購入額=3136万円
建物の場合:4480万円X建物の買い換え購入額/総買い換え資産の購入額=1344万円

*このことから、将来買い換え資産を売る場合の取得価額は、実際の価格ではなく、上記で算出された、土地の場合は3136万円、建物の場合は1344万円から減価償却費が控除された残額となります。

Ex2) 譲渡資産の売却額が買い換え資産の購入額より多い場合
売却金:8000万円、譲渡費用:100万円、譲渡資産の取得費:3000万円(土地と減価償却後の建物の価格の合計)、買い換え資産の購入額:4000万円(土地2500万円、建物1500万円)

1.引き継がれる取得価額の算出:
買い換え資産の購入額X0.8=3200万円
(譲渡資産の取得費+譲渡費用)X3200万円/売却額=1240万円
1240万円+買い換え資産の購入額X0.2=2040万円
2. 引き継がれる取得価額と土地・建物への分配の算出
土地の場合:2040万円X土地の買い換え購入額/総買い換え資産の購入額=1275万円
建物の場合:2040万円X建物の買い換え購入額/総買い換え資産の購入額=765万円

Ex3)買い換え資産の購入額と譲渡資産の売却額が同額の場合
売却金:5000万円、譲渡費用:100万円、譲渡資産の取得費:3000万円、買い換え資産の購入額:5000万円

(譲渡資産の取得費+譲渡費用)X0.8=2480万円
売却金X0.2=1000万円
2480万円+1000万円=3480万円

売却した金額以上の金額で事業用資産を買い換えた場合の譲渡所得はどのように計算されるのでしょうか。

 

事業用の資産の買い換え特例を適用する場合、売却した金額の額数よりも買い換えた金額が多くても、売却金額に2割を乗じた額数を収入金額として譲渡所得の額数を算出します。このような場合の計算は、以下の通りに行われます。
(1)収入金額=売却金額X0.2
(2)必要経費=(売却資産の取得費+譲渡費用)X0.2
(3)譲渡所得=収入金額‐必要経費

Ex)売却額数3億円
買い換えた資産の購入価額5億円
売却資産の取得費9000万円
譲渡費用1000万円

収入金額:3億円X0.2=6000万円
必要経費:(9000万円―1000万円)X0.2=2000万円
譲渡所得:6000万円―2000万円=4000万円

売却した金額より少額で事業用資産を買い換えてしまいました。この場合の譲渡所得はどのようになるのでしょうか。

 

事業用の資産の買い換え特例を適用する場合、売却した金額より買い換えた金額の方が少額である場合は、その差額と買い換えた金額に0.2を乗じた額数との合計を収入金額として譲渡所得額の算出をします。
この場合の計算は以下の通りになります。

(1) 収入金額=(売却金額‐買い替え資産の購入価額)+(買い替え資産の購入額X0.2)
(2) 必要経費=(売却資産の取得費+譲渡費用)X(収入金額/売却金額)
(3) 譲渡所得=収入金額‐必要経費

Ex)売却金額5億円
買い替え資産の購入額3億円
売却資産の取得費8000万円
譲渡費用2000万円

収入金額=(5億円‐3億円)+(3億円X0.2)=2億6000万円
必要経費=(8000万円+2000万円)X(2億6000万円/5億円)=5200万円
譲渡所得=2億6千万円‐5200万円=2億800万円

親族の事業用に使用させている資産を買い換えようとしています。この場合、買い替えの特例の適用は可能でしょうか。

 

事業用の資産の買い替えの特例の対象は、所有者本人の事業用であることが原則となります。したがって、所有者本人でなかったら、この特例の対象には含まれません。
しかし、売却資産の所有者と生計をひとつにする親族の事業用の場合は、所有者本人の事業用と同等の扱いにされることになります。
売却だけでなく、買い換えた資産も同様の扱いになり、その資産の使用者が所有者と生計を一つにする親族である場合も特例の適用が受けられます。

事業用資産の買い換えの特例について教えてください。

 

ある事業を営んでいる個人が、事業用として使っている特定地域内の土地・建物などを譲渡し、特定の期間内に特定地域内の土地・建物などの資産を得て、その資産を得た日から1年以内に買い換えの資産を事業用として使った場合は、一定の要件を満たして、譲渡益の一部への課税を将来に繰り延べられる制度が、事業用資産の買い換えの特例となります。非課税にはならないことに注意してください。
この特例の適用の対象になると、売却した金額の額数より買い換えた金額の方が多い場合は、売却した金額に2割を乗じた額を収入金額として譲渡所得を算出し、少ない場合はその差額と買い換えた金額に2割を乗じた額数との合計を収入金額として譲渡所得を算出します。

この特例の適用を受けるためには、以下の要件の全てに該当しなければなりません。
1.買い換えるために売却する資産と買い入れの資産は、両方とも事業用に限られます。
2.買い替え資産と譲渡資産が、ある一定の組み合わせに該当するものであることです。
(1)東京都23区や大阪市などの既成市街地などの地域内にある事業所や事務所として使われている建物やその敷地用の土地の中で、譲渡日に入る年の1月1日に所有期間が10年以上のものを譲渡し、既成市街地などの外にある事業用の土地・建物・構築物・機械装置などを買う場合
(2)譲渡日の入る年の1月1日に、所有している期間が10年以上の国内の事業用土地・建物・構築物を譲渡し、国内の事業用土地(以下のaかbに当てはまるもので、面積300平方メートル以上)・建物・構築物・機械措置を買い入れた場合
a.倉庫、事務所、店舗、工場、営業所、作業所、研究所、住宅とその他のこれらと同等の施設の敷地用に使われているもの:当該の特定施設にかかわる事業上、必要な駐車場などとして使われるものも入り、福利厚生施設に当てはまるものは場外
b.駐車場用として使われているもので、構築物や建物の敷地用に使われていないことに関して、建築基準法第6条第1項の定めによる建築確認の手続き、都市計画法第29条第1項・第2項の定めによる開発行為の許可の手続きなどが進行しているというやむを得ない事情があり、その事情の趣旨が記載された申請書のコピーなどの一定書類によって明確にされたもの
3.買い換えの資産が土地などの種類である場合は、その取得する土地などの面積が譲渡した土地などの面積の5倍を超えないことです。5倍を超過する部分に関しては特例の適用が受けられません。一定の農地の場合は、10倍以内になることもあります。
4.資産譲渡を行った年中、その前年中、譲渡を行った年の次の年中に買い換えの資産を取得しなければなりません。前年中に売却した資産を買い換えの資産にするためには、取得年の次の年の3月15日までに「先行取得資産に関わる買い換えの特例の適用に係る届出書」を管轄税務署長に出してください。
売却した年の次の年中に資産を買い換えようとする場合は、確定申告書を出す際に、買い換えようとする予定の資産に関した取得予定年月日・取得価額の見積額・買い換え資産が買い換えの組み合わせのどちらかに当てはまるかの別、それ以外の明細を記した「買い換え(代替)資産の明細書」を添える必要があります。
5.買い換えの資産を得た日から1年以内に事業に使わなければなりません。取得してから1年の期間内に事業用として使わなくなった場合は、特例の対象にならないのが原則です。
6.特例の対象にしたい資産に関して、他の特例(優良賃貸住宅の割増償却や優良住宅地の造成などの為の土地譲渡を行った場合の長期譲渡所得の課税の特例など)と重複して適用させるのは不可能です。
7.土地などの譲渡に関しては、譲渡年の1月1日現在の所有した期間が5年以上であることです。2013年12月31日までの譲渡については5年の制限が停止されますが、2の(1)(2)のようなケースは、所有期間が譲渡年の1月1日から10年以上であることになります。
8.譲渡資産の譲渡を行う手段は、出資・贈与・収用など・交換・代物弁済などではないこと。買い換えの手段も、交換や贈与、代物弁済、所有権移転外リース取引などではないこと。

この特例の対象になった場合の譲渡所得額は、以下の計算式によって算出されるのが原則です。
1. 譲渡する資産の譲渡価額より買い換えの資産の取得価額の方が多いか、同額の場合
(1)収入金額=譲渡の資産の譲渡価額X20%
(2)必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)X20%
(3)収入金額‐必要経費=譲渡所得の税額
2.譲渡する資産の譲渡価額より買い換えの資産の取得価額の方が少ない場合
(1)収入金額=譲渡の資産の譲渡価額X80%
(2)必要経費=(譲渡資産の取得費+譲渡費用)X(収入金額/譲渡の資産の譲渡価額)
(3)収入金額‐必要経費=譲渡所得の税額

特例の対象になるためには、確定申告書を出す時に以下の書類も添付してください。
1.譲渡所得の内訳書:確定申告書付表兼計算明細書
2.買い換え資産の登記事項証明書等の、その資産の取得を証明する書類:買い替え資産を得る予定が認められ、特例の適用が受けられた場合は、買い換え資産を得た日から4ヶ月以内に提出する必要があります。
3.譲渡資産・買い換え資産が特例の適用要件である特定地域内にあることを表明する市町村長などの証明書など

買い換え資産を得る予定が認められ、特例の適用を受けて申告した買い換えの資産の「実際の取得価額」が「取得価額の見積金」より多かった場合は、買い換えを行った日から4ヶ月以内に「更正の請求書」を出して所得税の還付をしてもらうことが可能で、少なかった場合も買い換えた日から4ヶ月以内に修正の申告をし、差額の所得税を納付する必要があります。
来年中に買い換えの資産を得る予定で買い換えの資産を得なかった場合・買い換え資産を得た日から1年以内に事業用として使っていない・使わなくなった場合は、このような事情に当てはまることになった日から4ヶ月以内に修正申告と差額の所得税を支払ってください。

*2011年3月11日~2016年3月31日の期間内に被災区域内の建物・構築物、土地などで、2011年3月11日前に得たものを譲渡し、国内の土地など、減価償却資産を得る場合jなどの、特定の事業用の資産の買い換えなどの場合に対する譲渡所得の課税の特例という制度があります。

買換えの特例の対象となる事業用資産には、どのようなものがあるのでしょうか。

 

売却土地建物、船舶が事業に使用されていたものであることが前提となります。また、買い換えた資産を事業用として使うことも必要です。ここでの事業には、小売業、農業、製造業などの様々なものがあります。事業と同等のものの用途に使用されている土地なども特例の対象になります。

事業と同等のものとは、不動産の貸付などのように、事業と言える程の規模ではないものの、相当の対価を取得して引き続けて行われるもののことです。
1.相当の対価を取得しているかに関しては、不動産の貸付などの場合、固定資産税・減価償却費などの必要経費を回収した後に、その相当利益が発生しているかによって判定します。
2.引き続けて行われているかに関しては、貸付などに関する契約の効力が生じた時点の現況で、その貸付などが相当期間内に引き続けて行われる予定があるかによって判定します。一度に対価を受け取って、その後、賃料などの対価を全くもらっていない場合は、引き続けて対価を取得していることにみなしません。

事業用の資産に当てはまらないものもあります。
1.雑所得や棚卸資産の基因になる土地・土地の上にある権利
2.事業用の資産の買い換えの特例の対象になるためだけの目的で、一時的な事業の用途に使用したと認められる資産
3.空閑地の土地・空き家である建物など:物品置場、運動場、駐車場などで使っている土地でも、特別な施設を設置していないものは、この空閑地の範囲に含まれることとなります。

譲渡年の1月1日の現在の所有期間が5年を超えない土地などの譲渡に関しては、事業用資産の買い換えの特例の対象にはならないのが原則です。しかし、2013年12月31日までの譲渡については、譲渡年の1月1日の現在の所有期間が5年を超えない土地でも、以下の場合以外は、特例の適用対象になります。

1.譲渡日の入る年の1月1日での所有期間が10年以上の既成市街地など内の事業所・事務所として使っている建物・敷地として使われている土地から、既成市街地外にある事業用土地など、機械、構築物、装置の買い換えの場合
2.譲渡日の入る年の1月1日での所有期間が10年以上の国内事業用土地などや建物・構築物から国内の事業用土地・構築物・建物・機械・装置への買い換え:ここでの土地などな、以下のどちらかに当てはまるもので、面積が300平方メートルを超えるものに限られます。
(1)倉庫、事務所、店舗、工場、営業所、作業所、研究所、住宅とその他のこれらと同等の施設の敷地用に使われているもの:当該の特定施設にかかわる事業上、必要な駐車場などとして使われるものも入ります
(2)駐車場用として使われているもので、構築物や建物の敷地用に使われていないことに関して、建築基準法第6条第1項の定めによる建築確認の手続き、都市計画法第29条第1項・第2項の定めによる開発行為の許可の手続きなどが進行しているというやむを得ない事情があり、その事情の趣旨が記載された申請書のコピーなどの一定書類によって明確にされたもの

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